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100年に1度の大研究

[2026.07.19]

私の本棚に1冊の本があります。

1987年度ノーベル生理学・医学賞を受賞された利根川進先生と知の巨人、立花隆氏の対談をまとめた「精神と物質」という本です。1990年7月に出版され、大学生だった私は同年の9月に購入しました。本の後ろを見ると「第5刷」と記されています。たった2か月で第5刷とは、当時の注目度が伺えます。

当時医学生だった私は、抗体がなぜ無数にある病原体に対応しうるのか、その謎が利根川先生によって解明されたことに強い興味を抱き、夢中になって読んだ記憶があります。対談ですので読みやすく、また、注釈もあり、分子生物学に対してかじる程度の知識しかなかった私も読みやすいものでした。

利根川先生が逝去されたとの報道を聞き、何十年ぶりかにこの本を開いてみました。「抗体の多様性生成の遺伝学的原理の解明」という免疫の永きに渡る謎を解き明かした業績に対し、日本で初めての、しかも連名ではない単独での、ノーベル生理学・医学賞受賞という快挙でした。同賞の選考にあたったスウエーデンのカロリンスカ研究所の選考員の一人が「100年に1度の大研究だ」と言ったことが語り草となっています。それまで分子生物学の基盤であった「1遺伝子1蛋白質」と「遺伝情報は変化しない」という2つの常識は利根川先生によって覆されました。大研究であり大発見と言われる所以です。

この世紀の大発見は、その後裾野を広げ、免疫系医学の研究や治療に多大なる影響を与えました。われわれが恩恵を受けているワクチンや様々な免疫療法などが挙げられるでしょう。

「精神と物質」という本を久しぶりに開き、当時にタイムスリップすることによって医学の進歩を改めて感じることができました。それは利根川先生をはじめ、偉大なる先人の方々の素晴らしい功績が礎となっています。感謝と共に心よりご冥福をお祈りいたします。

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